「どうして教えてくれなかったの。私だけ仲間はずれなんてさ」
朔も穂香も知ってたのに、私だけ知らなかった。想史も、教えてくれれば良かったのに。プラスチックカップが、ぺきと薄い音を立てた。知らずに力を入れてしまっていたみたい。蓋が一部分外れてしまっていた。
「……教えて欲しかったか?」
少し間を開けて、朔が答える。そりゃあ、人づてに聞くのはショックだよ。だけどこんな風にひとりだけ内緒にされていたら気分が悪い。私は想史の幼なじみでも友達でさえもないの?
黙っていると、朔がぼそぼそと低く聞き取りにくい声で続けた。
「お前、想史のことが好きなんだろ」
聞き間違いかと思った。目を見開いて朔を見ると、彼は冷静な目でこちらを見ていた。
「っつうか、ずっと好きだったろ。ガキの頃から」
「な、な、そんな、どうして」
「見てればわかる。穂香も気づいてたよ。だから黙ってられなかったんだろ。”瑠奈に奮起してほしくて言ったらショックを与えただけだった”と気にしてた」
そんな。朔にだけはばれないようにうまく隠してきたつもりだったのに。
っていうか、穂香にも悟られていたなんて。”知らなかったの?”なんて白々しい。私をけしかけるつもりだったんだ。穂香はいいよ。綺麗で頭も良いんだもん。あのお似合い彼女と互角に戦える。でも私じゃ、戦う前から惨敗てるじゃん。ひどいよ。
「俺はお前がショックを受けると思って……言えなかった」
握りつぶしそうだったカップを持つ手から力が抜けていく。朔がそんなことを思っていたなんて。



