しばらくはぎくしゃくしていたけど、最近では前とは比べ物にならないくらいよく話すようになった。ランチも行くし、お茶もしに行く。朔がいなくなる寂しさを私で紛らわせようとしているようにも見えるけど、それは言わないでいてあげよう。
「うん。母さんも。父さんも、元気で」
そう言う朔は、少し大人になって、またいい男になった。と、穂香は言う。なんと二人はそろって同じ大学に合格。そのうち学生結婚でもしようかと話しているそう。まったく、羨ましいことだわ。
私はと言えば、こっちの世界に帰ってきたあとは心を入れ替えて頑張ろうと意気込んだ結果……非常に無難な地元の短大に合格した。頑張っても、産まれつき頭の作りが違う連中には敵わなかった、とは言いたくない。
保育士の資格が取りたくて、わざわざその学部を選んだんだ。ピアノも高校一年から習い始めて、非常に苦労した。けど頑張ったから今の私がある。
新幹線のホームにアナウンスが流れる。朔が乗る新幹線の到着時刻が近づいてくる。
「いいなあ、一人暮らし」
ぼそっと言うと、朔は嫌味な笑顔でにっと笑った。
「悔しけりゃお前も同じ大学受かれば良かったんだよ」
できないのわかってて、そんなこと言うんだ。やっぱり嫌なやつ。べーっと舌を出すと、ぽんぽんと頭を叩かれて舌を噛みそうになってしまう。



