交互に攻める想史と穂香に言いかえす朔は、もう普段通りの朔だった。顔色もみるみる良くなっていく。
「あ、もしかしてお前。またトリップしてたな?」
ふと私を見てそういう朔。
「うん。いい夢見させてもらったよ。朔は?」
「俺? ダメだね、前と同じ。お前がいないだけのつまらん世界の夢をずっと見てたわ」
さらっと言った言葉が、私を嬉しくさせた。朔、私がいない世界はつまらないんだね。
「あ、双子しかわからない会話してる」
「うんうん、双子って感じ」
振り返ると、そこにいた朔をのぞく全員が、安心しきった表情で笑っていた。ああ、良かった。私、帰ってきて良かった。ここにも、私が望んでやまなかったものがたくさんある。
「朔……なんか今まで、色々とごめんね」
私、すごく感じ悪かったよね。ホッとしたら、するりと素直に謝ることができた。
「なにが?」
謝られた方は、きょとんとした顔をしている。私に気を遣っているのではなく、自然とそんな顔をしているから、また笑えてしまった。
「なんでもない」
温かい涙が一粒、鼻の横を通っていった。それを指でぬぐって、また笑った。
ありがとう、朔。私と双子で産まれてきてくれて、本当にありがとう。



