「ただいま、朔」
そう言うと、朔は何度かまばたきをした。まるで長い夢から覚めた人のようにぼーっと辺りを見回し、最後に私に視線を止めると、突然ぷっとふきだした。
「なんだお前、その格好……」
そう言われてみれば私、すごい格好で来てしまった。川に入って濡れた全身。張りつく制服、裂けたスカート。そのどっちも泥のシミが盛大についている。靴下も草だらけ泥だらけで、靴は片方なくなっていた。やばいと思ったら、髪の毛から肩にピンクの花びらが落ちてきた。コスモスまでくっつけてきちゃったみたい。
「ははは。なんだよ、笑わせにきたのかよ。手が込んだボケだな、おい」
ボケじゃない。私、必死だったんだから。朔が死んじゃうかもと思って、そしたら二度と会えなくなってしまうかと思って……。
「違うもん……バカ朔……」
でも、まあいいか。顔を見てホッとしたら、また涙が溢れた。朔が元気で笑っているなら、それでいいよ。
「なんだ、みんなそろって。今日は誰かの誕生日か?」
朔は皆の顔を見てそんなことを言う。自分が死にかけていたことをわかってないみたい。ボケはどっちよ。
「お前の命日になるとことだったんだよ、バカ。どれだけ心配したと思ってんだよ」
「そうよそうよ。あんたバカよ」
「なんだお前ら、バカバカって」



