病院に着くと、面会時間ぎりぎりになっていた。薄暗くなった病棟の廊下を走ったら看護師さんに叱られた。
そして朔が入院している個室の戸をノックして開けると。


「瑠奈っ!」


突然目の前にチカチカと星が待った。待ち構えていたお母さんに平手で頬を叩かれたのだと気づいたときには、想史の腕の中にいた。吹っ飛ばされた私を支えてくれたみたい。


「あんたって子は、あんたって子は本当に……!」


そう言って私の肩をつかむと、わあわあと泣きだした。


「心配したじゃないの! どうして家出なんてするのよ! 変な男に何かされたりしなかった? というか、どうして濡れてるのぉぉぉぉ」


えっと……もしかして、私が失踪したことに少なからずショックを受けてる? それで、心配してくれてたの?

初めてのことに戸惑い、取るべきリアクションがわからない。混乱しているらしく、大声で泣きわめくお母さんを私から引きはがし、お父さんがなだめる。そうしてようやく、ベッドの上の朔の顔が見えた。


「朔……」


ゆっくりと近づく。傍には穂香がいて、手を握ってくれていた。

朔は前に会った時のように酸素マスクを外していた。それだけでも状態がだいぶ良いことがわかる。私が近づくと、朔がうっすらと目を開けた。