「……ぷ、わ、ぅ……あっ」


気づいたら、まだ水の中にいた。一瞬気を失っていたのか。体にまとわりつく制服。足はやっぱり底につかない。
何も判断できなくなって、ただ必死でもがいていると、ぐっと腕を引かれた。


「瑠奈!」


その声で我に返る。腕を引く主の方を見る。そこには、胸まで水に浸かった想史が。これ、どっちの想史だろう。


「暴れるな! つかまれ!」


ぐいと引っ張られ、勢いのまま想史の肩に抱きつく。すると想史が私を抱きしめた。そのまま水の中を陸まで歩いてくれる。


「ごほっ、ごほっ」


口の中に水が入ったのか、むせるように咳き込む。懸命に息を取り戻そうとしているうちに、ざぶっと音がして想史が陸に上がった。


「びっくりした。迎えに来たのは良いけど、まさか溺れてるとは」


想史に抱っこされたまま、頭上を見上げた。そこには、綺麗な三日月が一つ。満月じゃない。それに“迎えに来た”ってことは……こっちは、朔のいる世界だ。