ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜



コンビニの駐車場は建物をL字型に囲んでいる。突っ切れば、後ろの道に出ることができる。ちょっと遠回りだけど、そっちから帰ろう。全力で走っていると、不意に腕をつかまれた。

何!? 不審者!?

ぎょっとして振り返ると、そこにいたのはよく知った人物だった。っていうか、見飽きたよその顔。


「お前、なんでダッシュしてんだ」

「朔……」


最悪。どうしてこいつがこんなところに。そういえば、ジュースがないとか言ってたから買いにきたのかも。って、そんなことはどうでもいい。


「こっち来て!」


想史たちがこのコンビニに向かっていたら、すぐに見つかってしまう。朔の背が無駄に高いから。逆に朔の腕を力任せに引っ張り、コンビニの裏側に隠れた。


「何してんだよ。何かあるのか?」


一安心と思ったのに、朔がひょっこりと建物の角から首を出す。そして「ああ」と短く言うと、すぐに引っ込めた。


「想史か」


ぼそっと言う声は低く、夜の闇の中に消えていく。


「彼女……だよね」

「ああ」

「可愛い」

「だな。あれはやばい。彼女がいる俺から見てもめっちゃ可愛いと思う」


そんな一般男子の意見、全然求めてないし。筋違いとわかっていても、朔の事が憎くて仕方なくなる。