じわりと涙が浮かんで、零れ落ちそうになる。どうしたらいいの、朔。

ふらりと立ち上がる。月の引力に引っ張られるようにして、力の出ない足でゆっくりと川に近づいた。

お願い、朔。私を導いて。あんたができたように、私もここから元の世界に帰りたいの。

ねえ、謝るから。私が悪かったよ。誰かに愛してもらうことばかり考えてた。両親や想史を振り向かせる努力もせずに、全部スペックの高い朔のせいにしてた。

もう家で不機嫌な顔しないから。できるだけ。挨拶もちゃんとするよ。お風呂先に使っていいよ。洗面台もいいよ。冷蔵庫をスポーツドリンクで占拠されても文句言わない。

だから、ねえ。もう一度兄妹をやり直そうよ。せっかく確率の低い男女の双子として産まれたんだもん。それなりの奇跡、起こしてみせようよ。


「朔」


ねえ、朔。“サク”も“ルナ”も月の別名なんだって、知ってた? 穂香が教えてくれたんだ。こんなときに思い出すなんて。


「朔っ」


私たちが双子の月みたいだね。ひとつになると不完全な存在になってしまう。やっぱり私たちは、同じ世界に二人いなきゃいけないんだ。


「朔―っ! お願い、返事してーっ!!」