天地がぐるぐると回り、階段だか自転車だかわからないけど色々なところに体を打ちつけた。どこかに引っかけたのか、スカートの裾がびりりと引き裂かれるような音がする。
「いっ……たあ……っ」
倒れたコスモスの上に体が投げ出される。しかししばらく、衝撃と痛みで動くことができなかった。肺が潰れたみたいに痛い。
体が生きようと必死に息を吸う。涙がにじんだ目をゆっくりと開けた。
見上げた空の上で、雲が流れていく。ちぎれた雲の間から、私を照らす光が差し込んだように思えた。
優しく穏やかなその光は、やがて丸く大きな形を夜空に浮かび上がらせる。金とも銀ともつかない不思議な柔らかい光を放つのは、間違いなく月だった。
どうしてだろう。ついさっき見たのは細い下弦の月だったのに、今は満月が浮かんでいる……。
しばらくその姿に見惚れていて、はっと気づいた。のんびりしている場合じゃないんだった。
がばりと起き上がる。大きな満月が二つ、つまりもう一つ双子の月が出ないかと夜空を凝視する。しかし月はひとつのまま微動だにしない。
「嘘でしょ……」
ここでもダメなの? そもそもただのカンで来た場所だったけど、なんとなく朔が導いてくれているような気がしてた。なのに。



