ストローの先をくわえたまま横断歩道にさしかかる。赤信号を待っていると、横断歩道の向こう側に高校生カップルがいるのを見つけた。
男の子はうちの高校と同じ制服で、女の子の方は電車で一駅くらい離れているところにある高校の制服を着ている。うらやましいこった。重いまぶたでぼーっと信号をにらんでいると、前の道路を自動車が走っていった。
その長いライトの光で、横断歩道の向こう側にいた人たちの顔が一瞬ハッキリ見えた。
息が止まりそうになる。「あ」の形に開いた口からストローが離れた。
その男の子は、まぎれもなく想史だったから。隣には、知らない女の子がいた。とても可愛い子だ。垢ぬけていて、私とは比べ物にならない。綺麗に斜めに流された茶色っぽい長い髪。唇は小さくて赤みのあるピンクで、目が大きい。おっぱいも大きい。手足が細長い。
どくんどくんと胸がうるさいほど音を立てる。アイスティーの薄いプラスチックカップをもつ指が震えた。
あれが、噂の想史の彼女……? 金縛りにあったように動けないでいると、信号が青になる。二人は手をつなぎ、歩き出した。
その途端、頭の中でガンガンと警鐘が鳴りだした。ここにいてはいけない。踵を返し、コンビニの方へ駆ける。



