『あっちにみんないるんだ。行こう』
盆踊り会場になっているグラウンドと隣接している遊具広場は使用禁止になっていた。そっちの方では大人が手筒花火や仕掛け花火を上げる準備をする予定になっているから。
だけど反対側にある人工の小川は、自由に立ち入れるようになっていた。そっちに近所の子供たちが集まっているみたい。
想史は朔ではなく、私の手を引いて走った。群れ成す大人の間をすり抜ける風のように早く。朔じゃなく、私の手を引いて。あの時も、空には月が出ていた。
今思えば、あれが私の人生のピークだったな。
いつも私は、目立つ朔のおまけだった。想史だって、私が朔の双子の妹だから仲良くしてくれていたんだろう。今だってそうだ。あのときだけだった。想史が朔より先に私を選んでくれたのは。
また泣きそうになってしまい、ぶんぶんと首を横に振る。私って、粘着気質。こんなこと、想史は絶対覚えていない。いちいち思い出して悲しくなるのやめよう。悲劇のヒロインなんてまっぴらだ。
コンビニの看板の灯りが見えてきて、歩を早めた。レジでミルクティーをガムシロ入りで注文し、電子マネーで支払いを済ませてすぐにコンビニを出る。



