目を覚ますと、そこは公園のすべり台の上じゃなかった。真っ白で、何もない。空の青もアスファルトの灰色もなく、上か下か、右も左もわからない。

てっきり公園で目を覚ますと思っていた私は面食らった。たしか、あっちの世界でお使いに行って……そう、点数シールがついているパンを買った。その後からやり直せると思っていたのに。ここはどこ?

よく見ると、白い景色の中にふわふわと、虹色の玉がいくつか浮かんでいた。それはシャボン玉のように薄く儚く見える。

触れたら壊れそう。そんなシャボン玉が私の横をすり抜けた。その中に、人の顔が見えたような気がした。知らない人だ。

魂、という単語がふっと頭に浮かんだ。あれは人の魂? そんなまさか。結局それが何なのか、証明する手立てはない。とにかく、目的地とは違う世界に出てしまったみたい。元の世界に戻るか、あっちの世界に行かなくちゃ。

何もない、方向もわからない真っ白な空間を闇雲に歩く。けれどどこにも出口らしきものはなく、焦燥と不安が募った。そのとき。

ふわりと、目の前をシャボン玉が通る。ぶつからないように慌てて身を引いた。その玉の中が、視界に入る。そこに写っていた顔は、虚ろな顔をした私だった。