瑠奈が無事に彼氏に会えればそれでいい。その彼氏を一目見て、朔が復帰したらどんなやつか教えてやろう。何も言ってなかったから、朔だって瑠奈に彼氏がいることを知らないはずだ。

公園を囲む垣根の間から、そっと瑠奈の様子をうかがう。公園には他に誰もいない。彼氏はまだ来ていないのか。来るまで見守っているか。だって一人じゃ危ない。

不審者は俺かもしれないと思いつつ、隠れたまま瑠奈の後姿を目で追う。けど、何か普通じゃない。公園の中をダッシュして遊具の方へ駆け寄った瑠奈は、おもむろにすべり台に昇り始めた。

あいつ、大丈夫か? 普通高校生が一人でダッシュしてすべり台、昇るか? 異常な行動が心配になり、やっぱりもう一度声をかけようとした。そのとき。

すべり台の頂上にたどり着いた瑠奈の目の前に、突然真っ白な穴が開いた。


「な……!?」


なんだあれ。たまらずに垣根の陰から飛び出す。瑠奈のいるすべり台の方へ走る。瑠奈の目は真っ直ぐに上空を見ていた。

白い穴のようなものから、真っ白な腕が何本か伸びる。それは立体ではなく、平面のような薄っぺらさを感じさせた。ぞくりと背中に冷たいものが走る。