瑠奈のバカ。朔なんてどうでもいいだって?

そんな怒りに任せて瑠奈の頬を叩いてしまってからハッとした。いくらカッとしたからって、女の子の顔を叩くなんて、何をやってるんだ、俺は。

いくら瑠奈がひどいことを言っても、叩く必要はなかった。他に冷静にさせる方法はいくらでもあったはずなのに。

自己嫌悪で居ても立ってもいられず、部活でもミスを連発。早退させてもらってから家に帰っても、涙目で俺を見上げる瑠奈の顔がまぶたの裏にちらついた。

よし、謝りに行こう。あっちだってもう冷静になっているだろうし。

そう思い立って家を出て、瑠奈の自宅へ。しかし家の窓から明かりは見えない。一家で朔の見舞いに行っているのかもしれない。

いつ帰ってくるだろうか。このままずっと家の前でウロウロしていたら通報されてしまうかもしれないし、おばさんやおじさんに見られたら、瑠奈だって気まずいかもしれない。

色々と考えているうちに一時間は経ってしまっていた。諦めて一旦帰ろう。明日の朝いつもの角で待っていれば、きっと会える。その時に謝るんだ。

そう思って家に帰ろうと踵を返した。昔朔や瑠奈と一緒に遊んだ公園が歩いて五分ほどのところにある。その中央を突っ切っていけば、近道になる。