早く、早く。愛が溢れているあの世界へ。 寂しくて仕方がないんだ。誰かお願い。私を、抱きしめて。 カンカンと音を立て、金属製の階段を駆け上がる。頂上で空を見上げると、さっきまでひとつだけ浮かんでいた月が、二つになっていた。 行ける。 私は月を凝視する。双子の月は私を待っていたように、輪郭を重ね合わせ始めた。