ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜



「っ、うう……」


家に帰ろう。力の入らない足でふらふらと歩き出す。誰にも泣き顔を見られないよう、バッグで顔を隠して。まるでアスファルトが雨をたっぷり吸った泥になってしまったみたい。足を取られるようでなかなか前に進めない。油断したら、ずぶずぶと飲み込まれてしまいそう。

家に着くとすぐ、自分の部屋で部屋着に着替えてベッドに潜り込む。今度こそ心からホッとできたような気がした。学校から家まで、いつもと変わらない距離なのに随分遠かった気がする。

泣いて歩いて疲れ切った私は、まぶたを閉じる。寝よう。寝て忘れよう。そう思うのに、まぶたの裏に初めて会った保育園時代の頃からの想史との思い出が次々によみがえって、涙は出るのに眠気がいつまでも襲ってこない。

ダメだ。ただ失恋しただけでこのダメージの受け方はどうなの。これが普通なの? なんか、自分がストーカー化しそうで怖いよ。私、自分が思っていたより想史のことが好きだったんだなあ。

だって、本当に好きだったんだもん。想史のことを忘れていつか他の人を好きになるなんて、今は考えられない。

泣くだけ泣いたらだんだん落ち着いてきて、芋虫のようにのっそりベッドから出て鼻をかむ。すると一階でお母さんが夕食を準備しているいつもの物音が。いつの間に仕事から帰ってきたんだろう。