ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜



一限目が終わった後で体調が悪いからと保健室に駆け込んだけど、熱がないからと言って追い返されてしまった。

なんとか平静を装いながら地獄の奥底に沈んでしまいそうな最低な気分で一日を過ごした。六限目が終わると、部活に向かう穂香から逃げるようにバッグを抱きしめたまま靴箱へダッシュ。早く帰ろう。もう誰にも会いたくない。

焦げ茶のローファーを履いて校舎の外に出る。サッカー部の活動するグランドの方は、死んでも見ないようにして。ぐっと首を下げ、校舎から離れた。

自分と同じ赤いチェックのスカートを履いた女子が、歩みを進めるたびにどんどん少なくなっていく。想史と同じ制服を着た男子も。

完全に同じ学校の制服が見えなくなったとき、空を見上げた。住宅街の真ん中で見上げた空は、憎らしいほどに晴れていて、目にしみた。

──ああ、やっと泣ける。泣いていいんだ。

緊張の糸がふつりと切れる音が、耳の奥で聞こえた気がした。その途端、ぽろぽろと涙が溢れだす。