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卒業式当日。


朝からクラス全体がソワソワしていて、落ち着かない雰囲気が漂っている。



今日の式を最後に、机を並べて学ぶ事も、毎日顔を合わせる事もなくなるんだと思ったら、友達と過ごす一分一秒はとても大切な時間になっていた。


どんな会話も楽しく、近付いてくる別れを寂しく感じさせた。


今日を含めた数日の間に、サイン帳には沢山のメッセージを書いてもらった。


それは、みんなとの思い出が詰まった大切な宝物の一つになる。



「もう本当に卒業なんだよねー。」

いつものように机の上でひじをついた瑞穂が、斜め上を見上げながら溜め息混じりに呟いた。


「あっという間の3年間だったよね。色々楽しかったなぁ。」

梢も色んな事を思い出しているようだ。


瑞穂と梢。


こうして、いつも一緒に過ごしてきた大切な友達は、


めでたく二人とも希望していた学校に合格し、


瑞穂は地元の専門学校に、


梢は推薦をもらって大学に進学する事が決まった。


ただ、梢は地元から離れた地域にある大学に通う事になった為、少なくとも大学に通う4年間はお別れする事が確実だった。


もしかしたら、もうこの街に戻って来る事もないのかもしれない。


でも、今はまだ、そんな寂しい事を考えたくないという気持ちだった。



「梢は生徒会の見回りとか、色々と忙しそうだったよね。」

梢にそう声をかけると、


「ホントだよー。あっという間に見回りのローテーションが回ってきてさ、二人が楽しい事やってる時に、私だけ一緒にいられなかった事がいっぱいあったんだから。」


ちょっとだけ悔しそうにしている梢を見て、私と瑞穂は笑った。


「でも、結構残って待っててくれたりしたよね。今までどうもありがとね。」


そう言って、席に座ったままペコリと頭を下げる梢に、私も瑞穂も


「いいの!いいの!」


と、何回も手を振った。