暗闇の中から救ってくれたのは大好きな君だった。

ーーガタッ!

いつも通りぼんやりそう思っていたら隣の席の椅子が引かれる。

あ…隣の人来たんだな…別に来なくていいのに。

話しかけられたくない…って〝鉄仮面女〟に話しかける人もいないよね。

「あの…僕は本野秋斗っていうんだけど、隣よろしくね」

…そう思っていた時期があたしのもありました。

…嘘でしょ?

…こんなあたしに話しかけるって…周りの人…驚いてるし。

「…………よろしく。てかあな…」

「僕は、本野秋斗!」

…知ってるんですけど。さっき聞いた。

何がしたいわけ。この男。

「あたしにはなしかけないでくれない?」

というか。

あたしが仲良くしたくないだけ。

仲良くしたってあたし〝鉄仮面女〟だし。

言いたいことを言って立ち去ろうとした時だった。

クラッ…。

少しめまいがして本野にぶつかりそう…!

そう思ってぎゅっ、と目をつぶる。

そうしたら次第に収まりトイレへといこうとする。

よかった。本野にぶつからなくて。

「ち、千鶴さん大丈夫…?」

「…べつに」

あれ…あたしこの人に名前言ったっけ…?

てか〝千鶴さん〟って。なかなか、あたしのことを名前で呼び人はいないよ。

…ほんと本野って…変なやつ…そう思ったあたしだった。