「…はっ、こいつの方が何千倍も大切だな
だから早くその荷物持って出ていけ」




その瞬間、女の口角が少し上がった気がした。




「……っ!そんな奴のどこがいいのよ!」




思わずついて出た言葉。



ーー……っ。




容赦ない平手打ちを受けた私を、彼は見下ろす。




「…あいつを知らないお前が語ってんじゃねぇよ」




なによ…それ、知らないのはあんたじゃない




その女は絶対ダメ。



何かがある。罠がある。



「その女は仁を愛してなんかない!」




女の勘ってだけでそう言い切った。




「もういい。シンヤこいつ追い出せ」




「…っやめてっ…離して!離してよっ!」



そんな抵抗も虚しく荷物と一緒にズルズルと引きずられて外に出された。



「…っ仁っじん!」




声を遮るように閉まる扉のその向こうで、軽く微笑んだ女の顔を見た。




ずっとずっと一緒に居ると…





「…さよならだ、美桜」





約束したのに…ーー。