「ほら、服なんとか乾いてるから。私は、風呂場で着替えるから。」

「すみません。ありがとうございます。」

ガウンから、少し湿った服に着替えて、一緒にエレベーターでロビーまで降りた。

店長がフロントから、覗いてにやにやしている。

「じゃ、私今から仕事だから。」

「あ、そうなんですか?すみません。すみません。」

ホストは、何度もお辞儀した。

「あの、もしよかったら、お礼させてください。これ俺の名刺です。店に来てくれたら、フルコースでおごります。」

雨でくたくたになった名刺を渡してきた。

「フルコース?」

「店が終わるまで飲んで、俺のお気に入りのラーメン屋に招待します。」

あー。客にしたいのかな?

怪訝な顔をしたのが、わかったみたいで、

「あなたは、命の恩人です!永久におごります!」

「なんじゃそら。」

少し笑うと、ホストも笑った。

「あ、あなたの名前は?」

「透子。」

「ありがとうございます。透子さん。絶対店にきてくださいね!」

ホストは、手を降りながら帰って行った。

「お前、店行くなよー」

店長が、フロントから、にやにやしながら言った。