伸二くんに励まされ、お店の前で別れた。


「体に気をつけて、元気でね」


「花音さんも」


少し大人びた伸二くんの背中を見送りながら、その場で荒井さんに電話した。


『もしもし』


「荒井さん、いま平気ですか?」


『いいけど』


「すみません、悩みましたが、やっぱり大阪には行けません」


『・・・そっか。


花音、いまどこ?』


「品川駅です」


『すぐ行くから待ってろ』


「待てません」


『は、なんでだよ?』


「私のことは、忘れてください。


お元気で、さようなら」


『花音、待てよ』


そのまま無言で、電源を切った。