大好きな、この声。


振り返ると、荒井さんが美人を連れてフロアに入ってきた。


対応している女子社員越しに、荒井さんをみつめていることしかできなかった。


私は、荒井さんのことが、本当に好きなんだな。


佐伯部長が奥から出てきて、応接室にお連れして行く。


遠ざかっていく背中。


荒井さんは私を一度も見なかったのに、どこかで期待している私がいた。


商談が終わったら、声をかけてくれるかも。


それにしても、あの美人、どっかで見たことあるような・・・。


だけど、荒井さんたちはいつの間にか帰っていて、何もなかった。


もう、ダメなんだな。


そこで、私はもう、荒井さんのことをあきらめてしまったんだ。


あとから、荒井さんが来たのは異動の挨拶のためだったと聞いた。


そういえば、昨年末にそんなこと言ってたな。


もう本当に、大阪へ行っちゃうんだな。