「事故って言っても、車の中には伸紀やタケトが乗ってるんですよ? 危ないことはできません」


故意に事故を起こさせることができたとしても、2人に怪我をさせるような真似はできない。


「あなたたち、当たり屋って知ってる?」


母親の言葉に俺とミホコは目を見交わせて首を傾げた。


「車にぶつかったように見せかけて相手からお金を奪う詐欺師の事よ」


その説明に俺は目を見開いた。


「車にぶつかるって、それじゃ本当に事故になるじゃないですか」


「ぶつかったように見せかけるだけよ。最初に自分で自分の体に傷を体に付けておいて、走って来た車に大きな物をぶつけるの。


木の枝でもなんでもいい、とにかく大きな音が出るものをぶつけるの。その状態で傷だらけの人間が車の前に倒れてたら、運転手はどう思う?」


想像してハッとした。


自分が轢いてしまったと思ってもおかしくはない状況が出来上がるわけだ。


そして運転手はきっと車の外へ出て相手を確認するはずだ。