村山はその女性の太ももを時折撫でて楽しんでいる。


それだけでも十分気持ちの悪い光景だったが、俺は必死に笑顔を画面に張り付かせていた。


「村山様ともなるとやっぱり本物しか相手にされないんでしょうね」


気持が悪いと思いながらも、デブな中年へ向けて様をつける俺。


背中には汗が噴き出していた。


「もちろんだとも」


「その、女性の方も?」


何気なく訊ねたつもりだったけれど、違和感があっただろうか。村山の隣に座っていた女性が顔をしかめたのがわかった。


しかし、村山自身はさして気にしていない様子で「もちろんだ」と、返事をして笑った。


今度はコーヒーの時とは違い、鼻の下をのばした汚い笑顔だ。


「俺は店で働く女には手を出さない。何人に抱かれて来ているかわからないからな」


村山の口から『抱かれている』という言葉を聞いた瞬間全身に鳥肌が立った。


つまり、そう言う事なのだ、


村山は『人間発注書』で女性を購入し、自分の相手をさせているのだ。


それは、あの若い彼女もそうなのか?


そう考えると、もう我慢の玄関限界が来た。


俺はにこやかな笑顔を張り付けたまま新人を促してソファを立った。