昔から言われてたから。


結婚するなら同職の女だと。
親父は反対するだろうか。


「組長。入るぞ」
組の仕事中は「親父」とは呼ばない。

「あぁ」





低く鋭い声。
こりゃ、不機嫌なときだ。



「何か用か」

俺は親父の目の前にあるソファーに、ドスンと座った。
圭斗はソファーの後ろで背筋を伸ばして立っている。

「見合いの件だ。明日、山中組と…」
「組長」


「なんだ?」

「俺は見合いには行きません」




俺がそう言うと、組長室の空気が凍った。
親父の隣に立っている、親父の側近の橋本 雪人(ハシモト ユキヒト)と、鴨志田 憲(カモシダアキラ)が気まずそうに顔を歪めた。


「なんだと…?」







親父の悪かった機嫌はもっと悪くなった。

「決めた女がいます。思っているやつがいるのに見合いなんて、相手方に失礼だ。」





「お前が…本命?」


俺、どんだけ遊んでるって思われてんだ。
親父にまで…。

「あぁ」


「堅気…か?」

「あぁ。皐月の妹だ」



昔から仲が良かった皐月達のことは、親父もよく知っている。

皐月は小学校の頃、親父に懐いてて、親父も皐月を息子のように可愛がっていた。





「皐月の…」