黒の村娘といにしえの赤鬼

「えっと、まずは…」
こんなにたくさんの本を見たのは初めてでうきうきと心が弾む。
いろんな本があるから何から手をつけていいか分からなかったが、初めに頭に浮かんだのは紫苑さんが言っていた鬼の力というものについてだった。
私は背表紙とにらめっこしながらそれらしい本を探す。

「あ、あった!」

ようやく見つけた本を手に取ってその場に座り込む。
ぱらぱらとめくっていると鬼の力について書かれた目次を見つけた。
そこに書かれていたのは、鬼の中でも力をもつ家の事だった。


日向家…時雨の家は強靭な身体を持つ。少しのことでは傷を負わない。

蓮水家…右京さんの家は天高くまで跳べる脚力を持つ。

桐生家…紫苑さんの家は…心を視る力を持つ。


「心を視る…私の心を見たという事?」


だから人間の村で暮らしていた頃の私を知れたっていうの?

私は別の本を読んでいる紫苑さんの横顔を見つめた。
黙々と本を読んでいる中でも私の心を視ているのかと思うと何だか気が抜けない。
変な事は考えない方が良さそうね。

…それにしても鬼は見た目が違うだけで人間と全く一緒だと思ったけどこんな能力があるなんて…。
そんな事を考えながら紙をめくる。


「…東雲家…癒しの力を持つ?」


東雲家は私の家。
という事は私はその力を使えるっていう事?


「紫苑さん」
「何?」

私は思わず彼に声をかけた。

「私は…癒しの力というものを使えるのでしょうか」