黒の村娘といにしえの赤鬼

「さっきの話聞いていた。お前はよほど人間の暮らしが気に入ってるみたいだな」

まー盗み聞きなんてタチの悪い。

「それは当然です。物心つく頃から過ごしていたんですから」

とりあえずこの鬼は敵。
私の気持ちも知りもしないで勝手にここに連れられてきて、その上一度でも村に帰してくれないんだもの。


「どうした?なぜ怒っている」
「…怒ってなんかいません」
「心外だな。人間だと思ったお前に鬼仙草を分けてやったというのに」


それに関してはすっごく感謝してる。
けど、それとこれは別。
というかあの時は私のこと人間だと思ってたんだ。
…そりゃあそうよね。
鬼の特徴である髪色と瞳の色が違うもんね。
竹林の結界だっけ?
そこに私がいたから調べたら私が鬼だって分かったのかな?


「…本当に村へ帰してくれないのですか?」
「何度言っても無駄だ。それに、今帰ったとしてもお前の身が危険だ」
「なぜです?私が鬼だということが村の皆にばれているとでも言うのですか?」
「ああ」


どうしてこういつもさらっと即答するのだろう。
まるで村の様子でも監視しているかのようだ。


「お前は鬼なんだ。いつまでも駄々をこねていないで鬼の姫として生活に慣れろ」
「…嫌だと言ったら?」


こうなったら真っ向から攻めるしかない。
日向さんが折れるまで刃向かい続けるわ…!


「…ふ、威勢のいいやつだ」


「えっ…ちょっ…」