黒の村娘といにしえの赤鬼

「…ん、眩しい…」

次の日の朝、障子から溢れる朝日と小鳥のさえずりで目が覚めた。
見るからに既に陽はすっかり昇ってしまっていて明らかに寝坊したようだ。

私は勢いよく上半身を起こすと、同時にふみさんが部屋に入ってくる。


「おはようございます。ぐっすりお眠りになられたようで」
「おはよう。ごめんなさい、寝すぎてしまったわ」
「いいえ大丈夫ですよ。さぞお疲れだったのでしょう」


優しいなふみさんは。
村にいた頃は寝坊なんかしたら仕事が遅れて大変なことになって父さんにも迷惑かけてたな…。

私は起き上がると用意されていた着物に着替えようと手を伸ばした。


「いけません姫様!お着替えは私の役目でございます」

ふみさんは素早く着物を奪い取ると焦ったように後ろに隠した。

「そんな…子どもじゃないから自分で…」
「いえ、なりません」
「…分かりました」

お風呂といい、着替えといい…何でも手伝ってもらう事には抵抗がある。
ふみさん曰く姫だから当たり前と言うけど、私は普通の村娘として育ったから違和感がありすぎて中々慣れないものだ。
お姫様なんて遠い存在だと思っていたのになぁ…。
それに私は昔から女の子が憧れるお姫様なんて興味がなかった。
小夜はいつもお姫様になりたいっていつも言ってたっけ。
まあ…あの子は村長の娘だから姫みたいなものだけど。


「姫様?」
「あ、ううん。何でもない。…さ、今日は私の母さんについて教えてもらえるのよね?ついでに屋敷の中も案内してもらえるとありがたいわ」
「はい、かしこまりました。任せてください」

ふみさんは微笑みを浮かべて頷いてくれた。