黒の村娘といにしえの赤鬼

「姫様、本日はお疲れ様でした」
「ありがとう、ふみさん」

私は一日の疲れがどっときて布団に倒れ込んだ。
なんて気持ちいいの…
このまますぐに眠ってしまいそう。

「ふふ。お疲れのようですね。母君の話はまた明日にしましょうか」
「うーん…そうね。ごめんなさい、お願いするわ」
「かしこまりました。ではおやすみなさい」


ふみさんは申し訳なかったけど、これ以上頭を使ったら本当におかしくなりそうだった。
とりあえず私の中でうまく整頓しておかないといけない。

私は布団に寝転がりながら天井を見つめる。
そういえば鬼の村に来てからやっと一人になれた気がする。
見慣れない部屋…高い天井…。
頬をつねってみても何も変わらない。
本当にこれが現実なんだ。
私はこれから鬼として生きていかなければいけないのか…。
今まで人間として生きてきた日々は私にとってどういう意味があったんだろう。
私が鬼だと知ったら小夜は…なんて思うかな。
私のことを裏切り者だと言って軽蔑するかな。
だとしたらやっぱり帰らない方がいいのかもしれない。
家族も幼なじみも故郷も失った私にはもう何も…残っていない。



「私は…孤独だ」


呟いた言葉はその通り静かな部屋に虚しく響いた。