黒の村娘といにしえの赤鬼

そういった時、私たちの周りに冷たい風が吹いた。
突風だったこともあり、私は乱れた髪を直しながら目の前の彼を見つめる。


「東雲(しののめ)珠々。お前は本来帰るべき所に帰って来たんだ」

「そんな…!私の名前は楠木珠々で…」

「人間でいた頃はな」

「人間でいた…頃…?」


何なのよ。
私は人間よ?
そんな言い方したら私が…まるで…


「鬼だっていうの?」

「そうだ」


彼は迷うことなく即答した。


そんな…私は鬼だっていうの?
一体…どういう事?

心臓がひどくうるさい。
疲れてもないのに息が乱れる。


「お前は純血の鬼族である東雲家のただ一人の生き残りだ。本来人が入っては来れない竹林来られたのも、鬼仙草がすぐに効いたのも鬼だからだ。珠々、お前の父という人間にはすぐには効かなかっただろう」


確かに思い返せば父さんの体調は段々と良くなっていった。
それに比べて私の擦り傷は…家に着いた頃には痕も残らずに綺麗に治っていた。

信じたくはなかったけど、鬼である証拠が次々に明かされて信じざるを得ない状況だ。

でもそうしたら私は父さんの実の娘じゃないって事…?

父さんはこの事実を知っていたの…?


「頭が痛い…」

衝撃的な話を聞いて頭痛がしてきた。


「…ここで立ち話するより中で話すぞ」

呆然と立ち尽くす私の手を取って歩き出すのだった。