「工藤くん」

君が。
僕の名前を呼んだ。
久しぶりだ、びっくり

「テスト範囲クラスのライン送っといたから」

僕が頭を下げると
「負けないよ」
と、君。

机の向う側、腕組した彼女のまんまるの目。

「うん」

てか、なんで。

「名前………」
「あ、ごめん。」

どうして、謝るの。

「呼びたかったの名前」
「なんで、」
「皆いるから」

そう、今は昼休み。
僕と君は一緒にお昼を食べるよね。
水曜日だけ。

「私のもの、したかったの」
「ふーん。」
「ちょっと、なんか言ってよ」

僕は昼は食べないよって言った。
どうしてって彼女が返す。
勉強するから図書室で。って答えた
お昼は食べてるの?って君が聞くから
授業休みに食べるけどなんて言えば
身体に悪いな!水曜日は強制、一緒に食べる日ね、って笑う。

「君のお弁当美味しいよ」
「簡単なものばかりだよ」
「愛が入ってるからかなー」
「うん」

即答するなし。

教室で皆はがやがやご飯を食べる。
この雑音を聞くのは案外心地いいものだ。
君は時折誰かに呼ばれて委員長の仕事をしているけど。それは嫌い。

相手が男だと尚更やだ。

でも君は優しいから
淡々とそれをこなして、僕の所に戻ってきてくれる。太陽みたいな眩しい笑顔を僕だけに向けてくれるのだ。


「みゆう、いつもありがとう」
「本当は毎日作ってあげたいけどね。」

さらっと名前を呼んだけど気にしない様子の彼女。

「なにそれ、プロポーズ?」
「そうかもね、よしたかさん」



むぐ。



「ちょ。大丈夫!!?」
「むヴ、むぜっ、………ごほごほ」

君がでかい声で安否確認。
とんとんと背中を叩いてくれる。

「あれ、委員長彼氏にプロポーズしてんぞお!」
「工藤お。先越されてやんのお」
「やだー、記念日ー?」

女子にも男子にも騒がれて、
君、こーゆーの嫌いなくせに。

「ふふ。よしたかさんは私の人だよ」
なんて、仲良しの友達に君が話しかける。

目立つのは好きじゃないだろお互い。
それなのにさあ。
そんな風に、牽制してんの?

可愛いけど。

「すいません、みゆう。
愛が咽につまりました」

君だって僕のだからね。


「のろけんなよお」
「工藤くん、ポエミーだぁ」
「よっ夫婦ー」


僕の友達がさらっと耳打ち
「クラス公認カップルだね」


嬉しいやら。そうでないやら。