「目眩がするほど、ふふふん、ふん」

鼻唄混じりに君が歌う。
のどかな午後。
緊張を隠しているのか君の手が細かく震えていた。

「目のやり場がないですか
汚くてごめんねー。」
「違、あの。」
「何」
「とても緊張しています」

僕の部屋。
付き合って一年経ってもそんな実感が無いくらいにお互いに何もしなかったから今更だけどって話になってこうして今彼女がテリトリー内におります。
去年とか何してたんだろ。

勉強しかしてなかったや。
君の手を握ることなく、顔を喜ばせることなく、気持ちを昂らせることなく、過ごしていた自分が腹立たしい。

「僕もけっこー余裕ないから」

今日だってお勉強会のくせに。
「あ、ぅん。」
いつ理性が外れるか。

「ねえ、みゆう」
「はい」
「みゆうは僕のこと何で好きになったの」

君は、僕にちょっとずつ寄りながら、隣にぽてんと座ると
「勇気をくれたの。最初はね。
高校に入って出会ってからは、なんでもそつなくこなすとことか、優しいところとか素敵だなって思って。
気づいたら好きになってたてゆうか」
「なにそれ可愛い!
やめてよ!照れるじゃん」

「よしたかくん」
耳元で彼女
「なんですか」

こそっと吐息。
「好きだよ」

馬鹿。
「押し倒すぞ」
「ええ」