工藤くんと中条さんの短い日常



「ねえ」

君が目の前で仁王立ち。
いつもの放課後勉強会が始まってすぐである。

いらいらしているのか目付きは鋭く、殺気オーラ全開。
僕は直視することができず、差し出されたスマホの画面をまじまじと見た。

「これ!誰!」

あ。

「これかあああ」

「この女の子誰なの?」

盗撮という形で残されたそれは、まるで週刊誌さながら僕と女性が仲睦まじくショッピングする写真であった。

ストリート系の洋服を着飾る彼女はダンスを習っているためかスタイル抜群。
あの時は隣がちょっと恥ずかしいくらいだったよ。

「あれ、知らないの。
春野さん」

僕は顔が緩んでしまうのを押さえながら極めて淡々とそう述べた。

「知らないわよ」
「清水の彼女さんだよ」
「…………で、?」

きょとん。そんな君の顔。
目をぱちくりさせて、まばたきする瞬間の睫毛がちらちら目の下で影になって映る。

「だから、頼まれてたんだってば。
清水くんにプレゼントしたいからって意見を欲しいって言ってたからー。」

弁明の言葉に嘘偽りはない。
下心なんてないからな!

「ふーん」
それよりさ、君こそ

「ついてくんなよ」
「はい?」
だってさあ。
「ついてこないと、撮れないでしょ。写真。」
「…………違うもん」
「どうせ清水とついてきたんだろう。
見え見えだし。そっちこそ最低ー。」

見たー?みゆうの顔。
あんなにきりっとした眼光は泣きそうに潤んで、固くしめていた口からもう嗚咽が出そうだった。図星ってことでいいのね。

「だってえ心配だったんだもん」
「信じてくれてなかったんだ」
「だってえ清水君の彼女可愛かったし」
「だってじゃないから。
僕あーゆーこは好みじゃないよ?」
「じゃあどんな子がいいのおお」

「睫毛が長くて綺麗な二重で泣き虫の癖に強がりで鼻筋が通っていて肌が白くて責任感があって真面目で手が細くて指の形が美しくて寂しがりやで引込み思案で歌が上手くて声が可愛くて誰にでも優しくて素直で笑顔が素敵で…」
「待って!一言でお願いします」

「ん、みゆう」

あっ。逃げた!
「逃げるな!」
「だってえ」

あーもー。なんなんだ、女の子て。
よくわからん。

教室にひとり取り残される。
放課後の運動部の声、吹奏楽部の音。
止まっていた時が動き出したように、流れ込む雑音に目が覚めた。

ずっと二人の世界にいたんだ。
はは。

表情筋を緩ませる。
やっと力が抜ける。

「ひゅーひゅー」

「あっ!清水」

「様子見に来たあ!中条さんと買い物楽しかったよお」
「てめえ」

飛び跳ねるように入れ違い。
清水が僕の側まで駆け寄ってくる。

「なににやけてんの」

だってみゆうが、可愛い。

「秘密」

嫉妬してる彼女を初めて見た。
不安がっちゃってあの子ったら。

「結局、春野さんから何貰ったの?」
「財布」

そんな最高に可愛い君のために僕もあの時プレゼントを買ってたのは

「てか、なんの記念日だったの。」
「ん?俺の誕生日」
「…早く言えよ!」

まだ、内緒。

「なんかくれんの?」
「え、あげないよ」
「じゃあその包みは?」

こっそり隠しておいた包装物。

「あ!触るなよお」