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「ねえさ」
ふいに彼女が言った。
「とぼけて、突っ込み合う、バカップルって素敵じゃない?」
僕は鳩が豆鉄砲食ったような顔をしたらしい。「なにその顔」と目の前の彼女が笑う。
視線を外して見た窓の向こうは際限なく青い空にもくもくの雲がゆらゆら浮いていた。
「何言い出すのかと思ったら」
「だって素敵なんだもん。
あんた、馬鹿になんなさいよ」
「やだよ、それより佳子の心情考えてよ」
「そのワークやり疲れた」
国語のワークをぱたりと閉じて、彼女はうーんと伸びをすると僕に向かって
「寒い」
と大げさに身震いした。
「カーディガン貸そうか」
僕は椅子に掛けていたミルクティ色のカーディガンを手に取る。
あれ、不機嫌な顔。
「そこは、今はもう6月やーん!って言うところなの!」
「6月だって寒いさ、女の子は温かくしてないと駄目なんだぞ」
「ぅ、うるさいわね」
ええ、なにそれ。
君ってお馬鹿のセンス皆無だよね。ボケるにしてもなんかこう、なかったのかな。
まぁそこも可愛いんだけど。
だいたいさ、
君のいう「とぼけて、突っ込み合う、バカップルって素敵じゃない?」なんて事柄事態がよっぽど馬鹿らしいんだよ。
まぁ、僕は
「ほら~~着なよ」
「いーらーなーい」
「身体冷やすなよお。大切なんだから体調崩しちゃ悲しいんだけど」
「はぁ!?」
そんな普段は優等生なのに、僕の前だけ少し抜けてる君と
「・・・・・」
「・・・・・」
たまーに、こんな馬鹿なことして
お互いに赤面しちゃう今みたいな瞬間が
「そこは、暑くて着られへんがな!
でしょ?」
「ハッ!」
特に素敵だと思うけど。