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「あー、いいなぁ」
ふいに彼女が言った。
「なに」
「彼氏とか彼女とか、わかんないとこ教え合うの。勉強。」
「ふーん」
僕はすこし考えてみる。
そしてこう返した。
「どっかわかんないとこある?」
教室で、残っているのは僕と彼女だけ。
勉強する人種がいないんだ。
だから放課後、教室は僕らだけの秘密基地。
「あるわけないでしょ」
「ほら、そーいう」
「私を誰だと思ってんの」
「学年二位様」
彼女はそうとう頭が良い。この学校でずば抜けて頭が良い。名前書きゃ入ると謳われたこの高校に何故して受験したかは知らないが、ここから中堅大学合格者が出るんじゃないかって噂されてるほど、頭が良い。
だから。残念だけど彼女のシチュエーションは叶えられそうにない。
「次、絶対【ア】だよね」
「それ以外に何があるのよ」
だけれどそれでいいと僕は思う。
教え合うなんてのは出来ないけど
「次、負けないから」
「僕を誰と心得る」
確かめ合うことが出来る
「学年一位様だぜ」
「うっざ」
そんな少数カップルのほうがいい。