キミを奪いたい



「はぁ……」



一つ目の角を左へと曲がり、そこで一旦立ち止まる。

そして、胸元を押さえ、はぁーっと大きく息を吐き出した。




「心臓、止まりそう……」



お兄ちゃんに嘘をついたこともそうだけど、自分がこんな行動に出たのが信じられなかった。



普段、なにをするにも優柔不断で、なかなか勇気が出ない私。

そんな私が、勢いいと言えどこんな危険なことに自ら突っ込んでいくなんて本当に信じられなかった。




……今ならまだ引き返せる。



やめておいた方がいいと制止をかける自分と、もしかしたらリョウに逢えるかもしれないという自分が脳内で衝突する。


けど、その迷いはすぐに掻き消された。




「……行かなきゃ」



ただリョウに逢いたいだけならこんな危険は犯さない。

危険だと分かっていても行こうと思ったのは、翠龍を襲ったのが本当にZeusなのか知りたかったから。



リョウに直接聞けなくても、もしかしたらさっきの人達からなにか聞き出せるかもしれない。


最悪、盗み聞きでもいい。緋月関連のことがなにか一つでも分かればそれでいい。