そっとエントランスの壁にもたれながらそう呟いた時、手に持っていたスマホから聞き慣れた着信音が鳴った。
画面を見れば、表示されていたのは侑真の名前で。
それが到着の合図だと前もって決めていた私は、着信には出ずにその場から駆け出した。
……あ、ちょうど着いた。
マンションから出た所でちょうど侑真たちの乗った車が視界に入った。いつものように手を振りながら、みんなの元へと小走りで駆け寄っていく。
と、その時だった。
「えっ!?」
いつもなら私が車に乗り込むまで開かないドアが突然開いて。
かと思えば、そこから瑠衣が飛び出してきてさらに驚いた。
どうしたんだろう。何かあったのかな?
手を伸ばしながら走ってくるその表情は、明らかに切羽詰まっている様子で。瞬時に何かあったのだと悟る。
でも、それが自分の身に起きているだなんてこの時は思ってもいなくて。
「あやの!早く来い!!早く!!」
「……え?」
瑠衣の声が届く距離になって初めて自分の置かれている状況に気が付いた。
と言うより、なぜ今の今まで気付かなかったのか不思議で仕方なかった。
「あやの!!」
こんなにも大きな足音が迫ってきているのに。