キミを奪いたい




「っ、リョウ……」



こんなの、逆効果だよ……。


落ち着かせてくれようとしているのは分かってるんだけど、こんなにもリョウの匂いでいっぱいになったら、余計に涙が出てきて止まらなくなってしまう。


「っ」


離れていかないように、両手をリョウの背中に回して、ぎゅうっと強く服を握りしめる。

すると、リョウはそれに応えるように抱きしめ返してくれた。


「……」


少しの間沈黙が訪れて、私の小さな嗚咽だけが部屋に響く。

その間、リョウはずっと私の後頭部を撫でてくれていた。


その手が止まったのは────


「驚かせて悪かった」


聞き取れないほど小さな謝罪の言葉が頭上から落ちてきたとき。



……なんで、謝るの? リョウは何も悪いことなんてしていないのに。



もしかして、私が泣いちゃったから?

それはリョウのせいじゃない。私の気持ちがまだ追いついてなかっただけで……