「……チッ。行くぞ!!」



目の前で繰り広げられる一部始終を、私は地面にうずくまったまま呆然と見ていた。


一人の男の人に次々と殴り倒されていく数人の男たちを──────ボロボロになりながらこの場から走り去って行く姿を、私は目を見開いて凝視していた。


おそらく、時間に表せばほんの十分にも満たなかったと思う。

けど、私にとったら数十分もの時間に感じられた。



「っ、」


視界に広がる嘘のような光景に、胸の奥から何とも言えない感情が込み上げてくる。



────だって、もうダメだと思っていた。
助かるなんて思ってもいなかった。


あの男の人がいなかったら私は─────