キミを奪いたい



「馬鹿だな、お前」

「……え?」

「逃げられるほど追いかけたくなんのが男の性(サガ)ってモンなんだよ」

「……っ、ひゃぁっ!」



い、今、首元噛ん…………あ。


反射的に顔を上げてしまい、すぐさま後悔した。

ただでさえこんなにも至近距離にいると言うのに、顔を上げてしまったらそれこそ“飛んで火に入る夏の虫”だ。


「……」


って、あれ?


次は何をされるのだろうと目をつむって身構えていたけど、何も起こる気配がなくて。

それはそれでおかしいと思って目を開けたら、それとほぼ同時に右肩に重みがかかった。


……リョウ?



右頬に触れる、リョウの髪の毛。

そこでようやくリョウに寄りかかられているのだと気付く。


「リョウ……?」


小声で呼びかけてみる。

けれど、なんの返事もない。



……もしかして、甘えて、たり?


いやいやいや、リョウが甘えるなんて考えられない。

となると、まさか倒れたとか……



「リョ────」

「アイツと付き合ってんのかよ」