乱暴に引き寄せられたにも関わらず、ちっとも嫌そうに見えない女の子。

頬を染めながら一緒に来たであろう友達に一言なにか投げかけて、すぐにリョウへと熱い視線を向ける。





それを見て嫌だと思った。

リョウに触れられて喜んでいるのを見るのも、リョウを見て頬を赤らめているのも。


それをリョウが全て受け入れているのも。



なにもかも嫌だと思った。



だけど、私がどれだけ嫌だと思っても、緋月の姫である私には嫌だって叫ぶことも女の子を引き離すことも出来ない。




……もし、もし私が彼女だったら、彼女のままだったら……


緋月の姫じゃなく普通の女の子だったら……



リョウを引き止められた……?












「ねぇ、ちょっと、聞いてんの?」

「………」

「おい!おいってば!あー、もうめんどくさい!イズ、連れてきて!」

「え、あ、分かった!」





腕を引かれてゆっくりと視界が反転する。


されるがままになっている私が最後に見たのは、女の子の腕を引いて二階へと上がっていくリョウの横顔だった。