「リョ──」
「触んじゃねぇよ」
息の仕方を忘れるほど冷めた声色だった。
あと少しというところで乱暴に振り払われてしまった手は、拒絶された痛みだけを指先に残して宙を舞う。
「失せろ」
「っ」
肩越しに放たれたその残酷な言葉に、目の前が一瞬にして真っ暗になった。
射殺されそうなほどの鋭い視線は、優しいリョウしか知らない私にとって鋭利な刃で突き刺されたかのような衝撃で。
もう、なにも考えられない。
リョウ……
瞳に映るのは、ホールの方へと静かに去っていくリョウの姿。
正気だったら、なんでわざわざ騒ぎになりそうな人混みに突っ込んで行くんだろうとか思ってたんだろうけど、今はそんなことを思う余裕なんか全然なくて。
ただ黙ってリョウの後ろ姿を見つめるだけ。


