隙を見せてしまったことに気付いたときにはもう手遅れだった。
あっという間にアゴ下へとずらされたマスク。
それによって顔が露出され、慌ててうつむいて顔を隠したけれど、それさえも手遅れだということは目が合った瞬間に分かっていた。
……どうしよう。緋月の姫だとバレたかもしれない。
嫌な汗が背筋を伝う。
ドクドクドクと速くなる鼓動。
こんなにもさわがしい場所にいるのに、どの音よりも心臓の音が大きく聴こえる。
……本当にヤバイ状況かもしれない。
そう思ってしまうほどのピンチに、これからどうすればいいのか分からなくなって、とりあえず下げられたマスクを元の位置へと戻した。
それに「あ!」とすぐさま反応した男の子。
「あーなんで戻すんだよ!かわいー顔してんのに」
「……え?」
てっきり“お前、緋月の姫か?”と聞かれると思っていたからビックリした。
おそるおそる顔を上げれば、目が合った男の子はさっきと同じようにニカッと笑ってきて。
そのくったくのない笑顔にきょとんとしてしまう。


