始まりは20××年の春頃だった。





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-第1話-


テロリン♬テロリン♬
携帯の音が鳴った。誰からだろうか。

『もしもーし?那月元気?!』

元気な声が携帯越しに聞こえた。
電話の相手はネットで知り合った同い年の裕平からだった。
リアルで会ったのは1回だけ。

『元気だけど?どうかしたの?』

裕平とは世間でいう"セフレ"という間柄だ。
そんな奴からの連絡など、大体の想像はできていた。
欲求不満になり私を誘ってきたのだろうと。

『今日、暇?!呑み行かない?』

おっと。予想外。

『暇だけど金無いからパス。』

この時私は金欠で、行くという選択肢は私の中では1ミリも無かった。

『金は大丈夫!俺の義理の兄が払ってくれっから!!』

裕平にはお姉ちゃんがいる。
つまりその旦那が来て払ってくれると言っているのだ。
有り得ない。なんで私が面識もない人と呑んで、奢ってもらうのか。

『兄貴、航大って言うんだけど那月の事知ってるし那月の分は払ってくれるって言ってるからさ!来いよ!』

何勝手に私の事を話してるんだ。
航大ってやつも頭おかしいだろ。
面識もない女によく金を払おうと思うな。
類は友を呼ぶって言ったものだ。

『私その人の事知らないし、奢ってもらう義理もない。行かないからね』

『まぁまぁ、そう言わずにさ〜。もう来るって航兄に言っちゃったし?20時に○○駅な』

ブチッ。ツーッツーッ。
切りやがった。なんて奴だ。
現在17時を過ぎた頃。
自宅から○○駅には電車で約1時間と10分。
今からシャワーとヘアメイクをしたらすぐに出なければ20時には間に合わないだろう。
断ることを考えたが暇潰しになるだろうと考え、ささっと支度を済ませ私は家を出た。