フワッと彼女の髪が揺れる。

 ウサギのように赤い目。

 ここに来るまでも随分泣いたのだろう。

 彼女の本当の笑顔は見たことがないなぁと考える。

 無理やりに作った笑顔なら、何度も見たけれど。

「紅茶でいいよね?」

 キッチンに向かいながら、そう聞く。

「うん」

 お砂糖を多めに、ミルクを少し入れる。

 それが、もう言わなくともわかっている、彼女の好みだ。

 自分のカップと彼女のカップを持って、ソファへと座る彼女の元へと向かう。

「ありがとう」

 そう言って、彼女がカップを受け取った。

「温かいね」

 両手でカップを包んでいる。

 その隣に座った。

 彼女から話し出すのを待つ。

 それが、いつものやり方。

 こちらからは何も聞かない。

 聞いちゃいけないと思っている。