考えがまとまらない内に由宇さんはトイレから出てきた。




「綺麗に洗いましたか?」



頭の中は由宇さんにあの時の話をするべきか迷いながら話しかけていた。





『ええ。その、汚してしまってごめんなさい。

拭いて取れるかわからないけど、使って?』





差し出されたハンカチと、視線の先を追って、スーツが汚れてた事に気付く。





こんなのちょっと手で払えばすぐ取れるし。




それよりも由宇さんがずっとチラチラと俺の手に持っているしおりを気にしてることがわかって

どうするか決めない内にしおりを返してしまってた。


両手でそっと受け取って
本当に、本当に大事そうに胸元でそっと握りしめていて、
口元には微かに微笑みを浮かべている。




その笑顔に胸がチクンと音を立てた。




試そうとした自分の行動のせいで、由宇さんを本当に困らせたんだと思うと、口から言い訳の言葉ばかり出てきてしまう。




俺ってサイテー……