「じゃあまた明日会社で…」



家の前まで送り届けて、来た道を戻ろうと背中を向けた俺の手をキュッと掴んだ加藤さん。





もう一度振り返り加藤さんを見ると、片方の肩に手を置き、どんどんと顔が近付いてくる。






あ…と思ったときには唇が重なっていた。






すぐに離れる唇。





『…待ってたらいつまで経っても結城くん何もしてくれなさそうだから。』





俺の胸に頭をつけて呟く言葉に、「ごめん…」て言葉しか出て来なかった。






『家、寄ってく?』





両肩に手を置いて体を離すと見上げてくる加藤さん。





「俺、堅いと思われるかもしれないけど、1ヶ月の間は…

ちゃんと付き合うまでは止めとこうと思ってるんだ。
だから…ごめん。」





思いきり期待させるような言い方だとわかってる。



でも他に断る理由なんて1つしか思い浮かばなくて。



だからそう言ってしまった。





加藤さんは残念そうな顔をしてたけど、『また明日ね。』と言って家へと入っていった。