金曜日の溺愛にはかなわない(完)

「待てよ。送るからいますぐ」


「いいです。タクシーでも拾います」



このまま社長といるわけにはいかない。
だってあたしあのキスから意識しちゃってる。



「危ないから」


「いいですって!」



社長があたしの腕を掴んでる手を振りほどく。



「頼むから。部下にそんな危ないことさせられないから」



〝部下〟
その言葉ほどいまのあたしに残酷なものはない。



「社長にとってあたしは部下ですよね?」


「そうだけど…」


「じゃあもうあたしに華金を返してください!もう残業はしません」



社長にぺこりと頭を下げて部屋を出る。


このままいままで通りに続けてたらあたしは社長を好きになってしまう。
社長にとってはただの部下でしかないのに。



「社長のバカ…」



下に降りると大雨が目の前で降っている。



「忘れてた…」



マンションに併設のコンビニで傘を買ってタクシーがつかまえられるところまで歩いた。

忘れよう。
すべてこの雨に流して。