捕まれた腕から彼の手が離れる。

どうしよう。

絶対に気分を害した。

何が「違う」んだとセルフツッコミする暇もない。

謝らないと…でも声が…っ


「クラスメイトなんでしょ。」

「…え…?」

「あれ。それも違った?」

彼が小さく首を傾げる。


「違わない…です」

「じゃあ入ればいいのに。」


そう言って、教室の中に入っていく。

私にとって重たかったドアを、軽々と開けた。


そして…「ん。」

開けっ放しにして、私の方に振り返る。


「えっと…」

「好きにすればいい。と思う。」

しどろもどろしてる私に淡々と言う。


開いたドアから見える、教室の賑やかさ。

大袈裟って自分でも分かってるけど、彼のおかげで未知の領域が垣間見えた。

今度こそ、彼は振り返る事なく教室に入って行った。


…あ…

結局、お詫びもお礼も言えなかった…


私ってほんとやっぱり…

地味でメソメソしてる『ジメ子』だ。